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緊急寄稿 サンタ・カタリーナ州で発生したChagas(シャーガス病)感染について |
2005年4月6日 |
慶応大学医学部 |
慶応大学医学部熱帯医学・寄生虫学教室の三浦左千夫さんから、貴重なご意見を頂きましたので、掲載させていただきます。感染源がほぼ特定されたことで一件落着と思っていたのですが、とんでもない誤解ということです。(美代)
このサイトでサトウキビジュースからChagas病に感染の報が書き込まれておりますが、1件落着のように書き込まれています。そこで、多少コメントを加えさせてください。
現在までに35例が急性真性シャーガス病の診断の元入院加療中です、彼らを含めると既に60名近くが被疑者扱いで検査中!この病気は、大変恐ろしく、今症状が無くとも、今後数年から十数年が経過し、突然症状が出るときがあります。
心臓、消化器系がダメージをこうむるというこの病気の恐ろしさを知っている日系人は、一連の報道を見て直ぐに反応をしてきました。一方で、現地日系紙誌は、時期的に日本人観光客も多かったはずですが、やや扱いが小さかったと思います。サンタカタリナ州フロリアナポリス周辺に2月〜3月に旅行し、海岸地帯でサトウキビジュースを飲んだ人、特に発症例の90%がナベガンテス地区の売店での飲用者です。
心配な方は、当方に連絡ください。検査診断は相談に乗ります。風邪のような症状で過ぎてしまう人の方が多いのです!!
このような感染様式でChagas病に罹患することは、ブラジル全国何所でも起こり得るのです! 特にアサイ椰のジュース、サトウキビジュースが原因とされているものが散発的に報告があります。そもそもがブラジル・サシガメ(Barbeiro)が病原体を持っているのです!! これからブラジル旅行を計画している人、また思い出一杯で帰国した人は御注意ください。
連絡先 | |
三浦左千夫 | |
慶応大学医学部 熱帯医学・寄生虫学教室 |
81-03-5363-3761 FAX:03-3353-5958 miuraska@hotmail.com |
この後、三浦先生に質問させていただいたところ、さらに詳細なメールを頂きましたので、以下に紹介させていただきます。(美代)
本来のChagas病はサシガメとの接触で感染が起こりますが、最近は感染様式、感染層(人的)、が社会情勢の変化とともに変わってきました。
今回も、人の集まる、時期、場所、一般的な飲み物、など様々の要因が重なり感染が短時間に広がったと考えます。
今まで、Chagas病に関する仕事をしてきましたが、何時このような事態が起こっても、まったく不思議では在りませんでした。なぜいままで、当局はChagas慢性感染者を未治療のまま放っておくのかも、大きな疑問です。今回も、感染者に対してどのような治療が行われているか? どのような検査をしているかが、いまいち詳しく報道されていません。歯がゆい思いです。
慢性感染者の治療は正確には未だありませんが、感染予防の意味では、急性期に使用可能な治療薬を適用するように、小生は常にアピールをしてきました。Ceara州で日本人医師として一人頑張っている、Dr. Hiroshi Shimokawaもその一人です。
州保健局でも慢性患者にやる薬は無い!の一言です。今回も、感染を確認されて、発症の無い人たちはどうなるのでしょうか?
このサイト仲間がその一人にならぬよう!祈ります。
また、慢性感染者からの輸血は禁物です。現在のブラジルでは、場所にもよりますが供血者の0〜28%の割合でChagas感染者です。慢性感染者の一部は何時までも血液中に病原体を排出しているのです。血液中に居ないときには細胞の中に潜んでしまう!従って感染歴が明らかな人は輸血は避けるべきですし、供血も止めるべきです! これも南米、北米のChagas病を知る医療関係者の多い所でのチェックシステムです。
日本にはまだ、そのようなチェックシステムは血液銀行には在りません。
日系出稼ぎ者も陽性者が居ますが、発症していなければ供血者になっている人が居ます。昨年はC.Grande出身の24歳の日系労働者がChagasの発症で、ブラジル帰国後になくなりました。彼は幼少の頃から持病治療のために輸血を余儀なくされていましたから、そのときの感染の可能性が明らかです。
サンパウロのような大都会では確かにサシガメからの自然感染は皆無と言っても良いでしょうが、輸血を過去に受けた方達は要注意です。
今日の一番の感染ルートは輸血でしょう!
不思議なのは母子感染が意外と少ないこと。Boliviaでは感染母の5%は先天性感染新生児を生みます。小生たちの臨床現場Ceara州の田舎でも例がありません。全体では0〜2.8%と言われています。慢性感染者に付いて私は3年間経過観察をしましたが、Chagasの病原体はある一定のリズムをもって血液中に放出されては、細胞内に侵入潜伏、を繰り返し、徐々に身体を蝕んでゆくと考えています。細胞内に虫が見られるときに治療薬を飲めば、少なくとも進行を食いためる、あるいは進行を抑制することが出来ます。残念ながら、根治療法は在りません。
※ 実は、1996年に帰国した時、献血しようしたところ、「ブラジルへ行かれていた場合、マラリアの危険性がありますので、帰国後1年以上は献血できません」と言われたことがあります。それで三浦先生に輸血によるシャーガス病感染の可能性をお聞きしたのですが、やはり危ないというのが結論。しかも、現場における認識は低いようです。私も含めてブラジルの都会に住む人などは、マラリアなど風土病は自分とは無関係と思う傾向があるわけですが、シャーガス病はそういった都会の住民、さらには日本に住む人にも、他人事ではない。そのように認識しておくことが、必要のようです。(美代)
2005.08.29追記
レプトスピラ症にご注意
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