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カラオケ中毒者増殖中 |
2005年1月4日 |
サンパウロ在住 美代賢志 |
知り合いのA木さんが、カラオケ大会に出場し、初心者のカテゴリーながら、見事優勝してトロフィーとCD録音券なるものをもらったそうだ。このCD録音券があると、協賛しているスタジオでオリジナルCDを無料で製作してもらえるそうだ。
「そりゃすごいですね」
「いやぁ、それがなぁ、すごくもないのよ。何しろ、初心者からセミプロまで、数え切れないぐらいのカテゴリーがあって、さらに1等から5等ぐらいまでトロフィーを呉れるわけ。まぁ、出れば何かがもらえるようになってるわけよ。たまたま、出場者がいないっていうのでリストに名前を入れられてねぇ…」
実はA木さんからは昨年末、カラオケに関する相談を受けていた。と言っても歌う方ではなくて、上手くビジネスにつなげられないだろうか?というもの。
「実はねぇ、県人会に手伝いに行くとね、週末はカラオケ大会ばっかり。それで見ていると、ステージに階段で上がるのすら大仕事のような、背中の曲がったヨボヨボのジイちゃんバアちゃんが大挙して押し寄せて、中には複数の会場を掛け持ちなんてのもいる。でっかいトロフィーなんかもらったら、抱えて歩くのが大変だっていうバアさんががいっぱいいるんだから。ありゃ、中毒だよ。そこでね、優勝するとオリジナルCDを録音するチケットがもらえるんだけど、ああいうのを上手くこっちで商売できないだろうか?」
「はぁ。で、そのオリジナルCDを作るビジネスをやろうってわけですか」
「そうそう。カラオケの伴奏のCDを簡単に作れないかと。もう、ブラジルもテープの時代じゃないよ。それで、そういうのをやるとなると、設備投資にいくらぐらいかかるだろう」
「それならいっそのこと、歌ってるところをライブ録音してあげたらどうです? あなたの優勝した歌声が録音されています、とか言って、その場で売りつけちゃえば。会場の拍手なんかが入ると臨場感あるし、感動もひとしおじゃないかなぁ」
「あはは。会場の拍手なんてないんだわ。せいぜい、自分の次の人が、前の人の歌い終わるのを今か今かと熱心に聞いているぐらいだよ。それ以外の人は勝手におしゃべりしたり、まぁ、カラオケ大会といっても、所詮はストレス発散、プラス自己満足だよ。だって、出場すれば何かがもらえるようになってるんだから」
…と、カラオケ大会隆盛の実態を聞くと、何やら老いの虚空と人生の充足が入り混じったようなものを垣間見た気がして、ソラ恐ろしくなるのでありました。で、その時は冷静に状況を分析、ビジネスにつなげようと思案していたA木さんだったのだが、優勝してトロフィーを手にし、さらには孫が制作したカバーで飾られたオリジナルCDまで作ってしまった後の口ぶりは、何やらミイラ取りがミイラになってしまったような感じなのであった…。
こうして毎週末、カラオケ中毒者が増殖しているようなのである。図らずもその証人になってしまった。ブラジルの日系老人パワー、恐るべし。
そうそう、サンパウロで開催されるカラオケ大会は、「出演者が数百人という規模のものが何十ヵ所と、毎週末のように開催されている」とは、音楽家で当サイトにも寄稿いただいている広瀬さんの話である。
特に意味も無く…アセロラの花です。 |
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