Home l 談語フォーラム l リンク l カタカナ表記について l サイトについて l ご意見

貴卑コラム l 作ってみようブラジルの味 l 迷訳辞典 l ブラキチさん いらっしゃい! l 何でもブラジルデータ

錬金術師たちの100周年

2004年12月18日

サンパウロ在住 美代賢志

 100周年と言えば、私にとっては日伯修好100周年(1995年)だったのだけれど、巷の常識じゃぁ、ブラジル日本移民100周年(2008年)ってことでOKのはず。

 さて、その移民100周年がまぁ、紛糾に紛糾を重ねているようであります。

 ブラジル都道府県人会連合会、いわゆる県連なんかはもう、100周年祭典委員会へのネガティブキャンペーンを続々と実施中でありまして、ブラジルの日本語新聞各紙も、この祭典委員会に批判的。

 正直、まったくの部外者からすると、「もっと前向きに盛り上げてあげれば?」と思う。ところがどうやら、そう簡単でもないらしい。「情報や根回しがまったく無くて、ポッと出しだから、盛り上げようにも盛り上げられない」とは、某新聞社編集長の意見である。たぶん、当事者というか、何らかのかかわりを持とうとしている人にとっては、それが実感だし、事実なのだろう。実際、アプローチという点では祭典委員会ってダメすぎって気はする。私だって、「100周年ですか。そうですか。では、勝手にどうぞ」という感想しか湧かないのだから。いや、それは前の移民90周年でもそうだった。修好100周年は、ちょっと違ったけど。

 それで、前の100周年(修好100周年)と変わらないなぁと思うのは、次の100年とまでは言わないけれど、今後の展望が、すっぽり抜け落ちていること。だから私なんぞは、「まぁ皆さん、期待していたパイを巨額のセンター建設事業に奪われそうだからって怒らなくてもいいんじゃないの?」という、うがった見方をしてしまう。貧乏性って嫌だなぁ…と、自己嫌悪にも陥るわけです。あ、それでも修好100周年の方は、「金が余ったならウチの団体にくれ!」という日系諸団体の意見に対して、主に商工会議所が中心となって奔走することで基金を設立することができた。というわけで、ある意味、日系社会の外部の方々のお陰で、何とか次につながるものを残すことができたわけです。

 それでぶっちゃけ、例えば県連なんて(とあえて書いてみるのだけれど)、たかが「仲良し倶楽部連合会」だというのに、なぜ移民100周年に、そこまでしゃしゃり出て、それだけの発言権がある(と、県連の人が錯覚する)のだろうか? これは、かなり不思議な、日系社会(というものがあると思っている人)が、真剣に答えを出さなければならないテーマである、と思う。自称「コロニア(日系社会)御三家」のひとつだそうだが、正直、各県人会レベルだといまだに、「県人会は親睦団体。会議は日本語で!」という一世会員が多い。つまり、仲良し倶楽部と自ら主張しているのである。もっとも、私は、県人会は早く利益団体に変わるべきだと思うけどね(一部は利益団体に移行しているんだけど、親睦団体というソフトな仮面をつけたままなんで、余計に性質が悪いという意見もありますが)。確かに、背後に各都道府県庁があるというのは認めるけれど、それって子供のケンカで言う、「おれの父ちゃんは、社長なんだぞ!」というのとどこが違うのか? 決して県庁の出先機関などではない。設立の目的はあくまで親睦団体であり、その親睦と言うのは、単なる一世だけの閉ざされたものである。もしかすると、財政的に自立できずに母県からの補助で運営しているということが、すなわち「出先機関である」ということになるのだろうか。もちろん、日本の県庁あたりが県人会に出先機関の機能を期待すること自体は自然なことだし、否定もしない。しかし、そういう風に(特定の個人の努力や関心ではなく)県人会が組織として機能し、その活動が日本側の基準で審査されているところが、どれぐらいあるだろうか。

 だから私は、県連もブラジル老人クラブ連合会も、活動の趣旨(親睦や福利厚生等)からしても、それほど変わらないんじゃないの?という目で見ていたし、今の県連に対して、そんなに威張っていいんですか?と、言いたいわけです。

 1988年の80年祭は、一世が主導権をもって開催される最後の移民際だと言われていた。それで、私も取材した1998年の90年祭は、一世がかかわる最後の移民祭だと言われていた。

 80年祭は知らないけれど、少なくとも90年祭のころは、例えば日伯学園構想など、まぁ、「100周年を見据え、一世が健在なうちに、一世が後世に残すものを」みたいな議論が、とりあえずは戦後移民を中心として行われていた。当時の議論のトーンでは、100周年祭は二世の手で行われるので今のうちに、という感じだった。それで結局、何もやらずに、と言うか何もできずに今まで来た。過去20年、私たちブラジル移民の一世って、「世代交代に備えて…」なんて言いながらたいそうな話をぶち上げたりしましたが、結局、何やってきたんですかね?

 祭典委員会に一世が少ないなどと主張する年配の一世もおられるようだ。しかし、私たち一世は過去20年、100年に向けた課題に結果を出せなかったんだから、後進に任せてはどうかと思う。とまぁ、昨今の議論を新聞報道で読んでいると、一世たちの主張に、さらに自己嫌悪に陥るこの頃。

 とは言っても、祭典委員会の主張にも、「うひゃぁ、そりゃいい。絶対に賛成! 出資します」とも思えなかったりもするのが悩ましいな。

 もう少しね、期待されているパイなんて考えず、お互い話し合っちゃぁいかがですか、と、思うわけです。あ、パイが無ければ誰も議論どころか見向きもしないか、移民100周年なんて。

この雲のように100周年が盛り上がる…ことに期待

 

貴卑コラム目次 l ページトップ

当サイトに掲載の文章や写真、図版その他すべての著作権は、断りのない限り美代賢志個人に帰属します。

Copyright (C) 2002-2004 Kenji Miyo All right reserved.