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E-1で気になるところ

2004年11月29日

サンパウロ在住 美代賢志

 某氏によってブラジルに持ち込んでいただいたために、「My E-1」との初対面は、化粧箱を開けるのではなく、彼の手提げカバンからプチプチに包まれた状態で取り出された時であった…(ちょっと悲しい)。しかも場所は、お互いに何の関係のないのに喫茶店状態で利用される某日本語新聞社の応接室(笑)。

 意外に重くて大きいという話も実家から聞いていたので、「ボディーとレンズを別個にすればカバンの隙間に入れやすいと思います」と、この某氏には告げてあった。このアドバイスを守った某氏が最初に取り出したのが、ボディーだった。これを見ると「厚みがあって丸っこいな…」という印象。やはり、「コンパクトとは言えない大きさ」か。それ以上に目を引いたのは…

 

 

 

 

 

 

「ボディーキャップしてないじゃん…」

 

 

 

 

 まぁ、カメラ超素人の某氏にとっては、ボディーキャップが存在するということ自体が、未知のことかもしれない。もちろんカメラもレンズも、プチプチに包まれているわけで、当たり前だが問題はないはず。ただ、ダストリダクションのない他のデジタル一眼だったら、いきなり撮像素子がホコリだらけで泣けてたろうな、と、逆説的に、E-1を選んだことに対して妙な安心感を受けた(笑)。

 で、もう2ヵ月ほど使用しているのだけれども、ゴミは一度も発見できていない。ダストリダクションが効いているようで、かなり実用度の高い、安心できる機能のようだ。

 …で、諸手を挙げて誉めちぎりモードに突入しそうになるのをこらえて、まずはA1の時と同じく、気になったところを書いてみたい。たぶん色々なところですでに意見が出されて議論が行われているはずなんで、手短に。

 

 全体としての印象は、長期にわたって一眼レフ事業が事実上の開店休業状態だったことは、ある意味で無視できない要素だなぁ…というもの。エンジニアのほとんどが銀塩の(AF)レンズ交換式一眼レフカメラを知らないのでは?と思える部分があること。実は「フルサイズ撮像素子を絶賛する」で「ビューファインダー」のことを「レンジファインダー」と記述していたカメラメーカーとは、オリンパスのことなのだ。あの時はまぢ、「家電メーカーがデジタルカメラ売ってるんじゃないんだぜ」と、ビックリした。で、今回のE-1でも、「あ、オリンパスの技術者って、ピコピコ電子カメラのパワーズーム&AFしか使ってなかったんだね」と思える部分がチョビチョビと垣間見られる。これに関しては、以下、ざっと紹介してみたい。

フォト・イメージ・ブラジル 2004 のオリンパスブースの一角

 

 ストレスのたまるボタン操作

 ボディー各部に散らばったボタンで「1ボタン1機能」を実現させたことは大賛成、なのだけど、一部のボタンでは、ボタンを押しても液晶画面が変化しない。慣れないうちは、「あれ、液晶画面が変わらないのは、ボタンの接点が接触不良かな? 防塵防滴なのに…」とか、「押し方が足りなかったかな?」とあせる部分。慣れてからでも「ボタンがちゃんと押されているかな」という不安というかストレスが付きまとう。結局、1ボタン1機能+前後ダイヤルという操作性よりも、機能ダイヤルのダイレクト操作というロジックのほうが、迅速かつストレスのない操作が可能というオチだったりする。ボタンがいくら多くても、所詮は(と書くと、さすがに言い過ぎだが)ピコピコなカメラなのだ。
 それから、メニュー操作時にも、シャッターボタン半押しで撮影体制に移行できるメニューと、移行できないメニューがある。このあたりは、あらゆるメニュー操作はシャッターボタンの半押しで撮影体制に復帰するように統一したほうが分かりやすいと思う。

 

 リセット機能@思考が硬直してませんか?

 個人的にはかなり頻繁に使う機能なので、大いに不満を抱いている部分。ボタンの位置が押しにくいのも不満だが(とくにフラッシュ装着時)、リセット「0」の位置で、出荷時の状態に復帰するのは大きなお世話。この変更サイクルも「クリア-0-1-2-3-4」の無限サイクルで、1を呼び出すには「クリア-0-1」とダイヤルを2回操作する必要あり。逆に4番だと、「クリア-4」と1回だけ。つまり、よく使う機能は4番に登録したほうがよいという、なんとも不思議な機能だ。もうひとつ、4番をメインにしたほうが良い理由は、1番の隣の0番に問題があるから。間違って0番を選択すると、あらゆる機能がリセットされる。しかもその後に1から4番のいずれを選んでも、例えばダイヤル機能の割り振りなどは出荷時の状況のまま変化しないというおまけ付き。正直、オールリセットの0番を、同じリセットと呼ばれる機能だからといって、それ以外のユーザー登録と同列に扱うことには納得がいかない。

 

 ユーザーには優しくね@バッテリー

 バッテリーのストッパーがないのは、やっぱりマイナス。落しそうで怖い…だけでなく、このカメラはバッテリーを押し込んですぐにボヨヨンと外に出てしまうと設定がリセットされるので、注意が必要(電源レバーのON/OFF位置は関係なし)。そのあたりの設計も、どうなのよ>オリンパス。あと、縦位置グリップも何となく、私の使い方ではメリットが見出せないでいる…(ので購入はしない予定)。あ、でも田中博さんの日記を読んでいると、雨天時のフィールド撮影をされる方にはお勧めできそうだ。雨中で電池交換というリスクを低減できます(該当の日記はこれ)。それと、電池蓋は取り外すという構造上の問題だろうけれど、α-9の電池蓋のカッチーンと開く動きに感動した私には、ちょっと安っぽい。ま、E-1の電池蓋がカッチーンと開くとそれこそ、中の電池を落下させてしまうんだけど(笑)。
 このカメラはメモリーもけっこう勢いよく飛び出すので、最初はビックリする。何しろ、私が試用させてもらったフォト・イメージ・ブラジルのオリンパスブースでも、説明員のお姉さんが「ヒャッ!」などとCFを落しそうになって叫んだ(笑)。ボディーの大きさといい、老人に優しくない仕様かもしれない(笑)。
 あと、DiMAGE A1同様、電池警告マークが出ると、あれよあれよという間にバッテリーがなくなる。パーセント表示とは言わない、せめて残り20%ぐらいで残量警告、本当に残り少なくなってから電池交換警告…ぐらいにして欲しい。ソニーのビデオなどはもう、何年も前からリチウム電池の残量が%で表示されるんだけど、特許などの壁があって難しいんだろうか?

 

 シャッター半押ししてから操作してるようじゃアマちゃん@オリンパスのロジック

 AFはAELボタン、露出はマニュアルが主体(しかも絞り優先的な使い方)なのでしばらく気がつかなかったのだけれども、AFでシャッターボタンを半押しした後は、ダイヤル操作を受け付けない。ちょっと、想像を絶するロジック。好意的に解釈すれば、「シャッターを半押ししてから操作してるようじゃアマちゃん」とオリンパスは考えているということなのだ。ま、ピコピコ電子カメラのロジックをそのまま流用したってのが真相だったりしそうだけど。やっぱり、半押ししながらでもダイヤル操作できたほうがユーザーに優しいと思うよ>オリンパス。
 もちろんマニュアル露出でも、AFでシャッターを半押ししていると一切の露出操作を受け付けないのだわ。そういうわけで、プロフェッショナル向けという看板どおり、MF基本のカメラ(あるいは皮肉にも、お手軽カメラの人差し指によるレバー操作の電動ズーム&AFに慣れている人向け)であると言えると思う。

 

 MFの操作性@ボディー

 私はMFを多用するので、「基本はMF、AELボタンでAF」という機能を割り振っている。で、C-AF時もAELボタンがAFメモ(AF&AFL機能)という具合にして、ボタンの役割をあわせている。ここで疑問になるのは、AELボタンの横にあるAFボタン。正直言って、「購入初期にテストで数回押されただけで、それ以後は操作されることのない悲しいボタン」なのである(どうせ中央の測距点しか使わないから)。なぜこれに、AF機能を割り振ることができないのだろうか? ちなみに銀塩でメインのα-9は、測距点の変更がメイン機能(つまりE-1と同じ)AFボタンを押すと、選択ポイントの変更にあわせてAFが機能する(てか、変更しなくても押した時点でAFが機能する)。この方がスマートだと思う。
 あと、フォーカスレバーはちょっとしたことで良く動くので、Cの位置がMFのほうが良い気もするのだけれど…。どうなのかな?

 それから、動体をMFしながら撮影できないのもマイナス。なぜMFできないかは以下の理由。

1) 連写中のMF操作を受け付けない
 もっとも、像消失時間が長いので、MFできてもあまり意味がなかったりもするけれど。

2) レリーズ後(ミラーアップ開始後)のMF操作を受け付けない。
 一撃必殺の動体撮影は、S-AFで運(機械)任せにするか、置きピンしかできない。ちなみに、レリーズタイムラグは短くはない。

 

 MFの操作性@レンズ

 このレンズ(14-54mm)に関しては、安くて描写が良くて、しかも「寄れる」という部分では非常に気にいっている。しかしながら操作性では、ひたすら罵詈雑言を浴びせても浴びせたりないぐらいの部分的な不満点がある(笑)。
 まず第一に、「このレンズはズームレンズじゃない」ということ。「え、単焦点じゃないだろ?」と思われた方、世の中には「バリフォーカルレンズ」があることを忘れておられませんか? そう、こいつは焦点距離の変化に応じて焦点面(フォーカス面)が変化するバリフォーカルレンズなのだ。何が問題って、測距精度の高い望遠側でフォーカスし、広角側に持ってくるという使い方ができない。このレンズは、ズーム(とは本来は言わないわけだが)してからじゃなきゃAFもMFもできない、あるいは、AFまたはMFでフォーカスを合せたら、以後はズームリング(とも本来は呼べないわけだが)を回してはいけない(そうじゃなきゃ、もう一度フォーカスをやり直さなければならない)というレンズなのだ。

 人差し指でレバーを使ってズーミングしてから、そのレバー軸上にあるシャッター半押しでAFするような、つまり必ずズーミング後にAF処理が行われるオリンパス系コンパクト・デジタルカメラを使ってたんだろうな、オリンパスの技術者は…と思った。


 ちなみに、設計上バリフォーカルなレンズをズームと称して販売したのは、おそらくミノルタ(現コニカミノルタ)が初めてだと思う。その時の言い分は、「焦点面の移動はAF機構により電子的に(AFモーターが自動的に回転して)補正されますので、事実上、ズームレンズとして機能しますというもの。つまり、ズーミングしてもフォーカス面は(設計というか実用上)ずれない。これはxiズームといって、電動ズームだった。もちろん、手動ズームでこれができないわけはなく、A1はバリフォーカス(みたい)だけれども、手動ズーム操作に合せてフォーカス面をAFモーターによって変更している。これぐらいは最低条件だと思いますよ>オリンパス。今後はバリフォーカスなんて仕様は採用しないで頂きたい、と、強く希望します。

 もうひとつは、通電していない状態ではMF操作ができないこと。これは「電源をいれずにフォーカスして遊びたい」と言うのとはちょっと違う、「まぢ」な理由がある。それは、「物理的に動かすことができれば、例えレンズが浸水しても(絞りがやばい可能性もあるが)撮影だけはできる」から。
 ブラジルのサッカー系カメラマンは一時、キヤノンからニコンにシステムを変更する動きがあった(今は再び、キヤノンが優勢)。これは、初代のEF白レンズに防水処理が行われておらず、浸水すればAFはおろかMFもできなくなる(EF単焦点白レンズもズイコー・デジタル同様にパワーフォーカスだった=たぶん今でも)というのが理由。激しいスコールの中、キヤノンのレンズが動かなくなっても(ボディーは動いたんだな、これが)、ニコンはMFで映像をものにできたのである。それを考えれば、例え防塵防滴でも、物理的にフォーカスができるほうが勝ち、ということなのだ。で、その後はレンズの防塵防滴に配慮しているキヤノンは、ユーザー心理が分かっている会社だな、と思う。

 あと、通電していない状態でフォーカスができれば、カメラのMPUに負担をかけることなく、連写中、またレリーズ後のMF操作も可能になると思う。

 それからレンズの操作性というのとは少しずれるけれども、被写界深度の表示は距離目盛のところに欲しかった。「プロ用」を謳っているのだから…という理由ではなくて、せっかくフォーサーズという新しいフォーマットなのだから(しかも単焦点レンズは限られているわけで)、35mmの銀塩システムから移行したユーザー向けの教育の意味も含めて、「違い」を積極的に作画に利用できるようにして欲しかった、というのがその理由。

 付け加えておくと、開放F値変動ってやっぱりどうかな?と思う。私はマニュアル露出が多いので、暗い方のF値で通すことが多い。ズーミングして露出が変わるのは嫌なんで。だからイメージ的にはF3.5のレンズとして楽しんでいる。

 

 MFの操作性@システム

 それからついでに書くと、フォーカスレバーがどの位置にあろうと、フォーカスリングを回転させた時点でMFに移行するほうがスマートだと思います>オリンパス。なぜなら、AFからMFに移行することが必要となるのは、AFでは使えないというケースに相当するはず(基本的に)。MFへの割り込み不可能な機械の頑張りの後、「AFダメなんでMFでよろしく>撮影者」と機械に言われ、「ひぇぇ、今からMFかよ!」と煽られるというのが現在のオリンパスのロジックだと思う。これは、「あ、だめじゃん」と撮影者が思った時点でMFに移行できるシステムよりも、むしろMFの熟練度が必要だと思う。
 それからC-AF時には、AELボタンにAFメモを割り振れば、AFメモ後、半押しでMF可能。これも、半押しなしでMFできたほうがよい気はする。

 

 ファインダー@EVFよりは素晴らしい…

 35mmフィルムの4分の1という撮像素子の大きさを考えると、E-1の光学ファインダーは頑張っている(んだと思います)。でも、α-9のファインダーと見比べると、「映画のスクリーン」と「テレビ(ただし大画面)」ぐらい、広がりの差がある(という印象)。縦横比も違うんで、広がり感は元々、銀塩のほうが有利なんだけどね。ファインダーの切れに関しては、近似的な焦点距離(α-9が28mmでE-1が14mm)では、「そりゃもう、断然α-9の勝ち(ちなみにスクリーンはM型)」。それと比べちゃいけないよ!という意見もあるかもしれない。が、そういう人には、「じゃぁ、フォーサーズって何のためのデジタル専用規格」なの?と逆に質問したい。つまり、デジタル最高画質(あるいは最高のデジタル写真システム)を目指したカメラであるからこそ、当然の比較と思う(てか、巷よくあるような下のクラスと比べる方がE-1に失礼だと思う)。で、E-300の発表って、ある意味でファインダーもペンタルーフプリズムにとらわれず、良いと思われるのを採用しますというオリンパスのメッセージだと思えば、将来に期待はできる(気にもなる)。

 

 ガッチンゴッチンボディー@この価格でこれ以上の「良いモノ感は求めない」けど…

 メディアスロットの蓋(の下側)がボディーのフィニッシュになっているのは、マイナスじゃないかな、と思う。この部分は、2台を首からぶら下げる体制だと、衝撃を受けやすい部位だと思えるのもひとつ。稼働部品に衝撃のストレスがかかるってどうよ?と思うのだ。使っているうちにガタがきそうな気がする部分。もっとも、耐久性に不安を覚える部分はこれ以外には、レバーやボタンがプラスチック製(α-9は金属製のレバーやボタンが多い)といった、こまごました部分しかないのだけれど。
 あと、グリップ側のストラップ金具はもう少し(5mmほど)前方のほうが良かった。私は縦位置撮影で、親指でレリーズすることが多いので。この場合は、AFのイルミネーターももう少しボディー上側にしたほうが、良さそうな機もする。もっとも、縦位置の撮影で親指でレリーズする人なら(私だけ?)、前ダイヤルの操作性はご機嫌だったりする。

 

 と、第一印象を書いてみた…ら、不満点は手短どころか結構あるな(笑)。ま、それだけ愛しているということで、理解してください。

(つづく…はず)

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