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舌の根も乾かぬ内に新たなデジカメ(2)

2003年1月13日

サンパウロ在住 美代賢志

 先に挙げた項目でDiMAGE A1を検討した場合、当然ながら気になる点もあった。そして、候補も当然のことながら、気持ち同様に揺れ動いたのであった。実は、最初に最も注目したのがオリンパスのE-1。防塵防滴、ダストプロテクション、ダイヤルとボタンによる迅速な操作…。いやぁ、いいですなぁ。が、「内蔵フラッシュが無い」という一点で対象外に。それじゃぁ、ということで検討したE-20は、過去にL-1を使っていた頃を思い出した。つまり、「レンズ交換式とほとんど大きさの変わらない一体型を持つ必要性って何だ?」。オリンパスに期待したいのは、E-1にフラッシュが内蔵された機種、あるいはE-1の廉価版。ま、存在しない機種を購入予定にしても仕方が無い。と、そんなこんなでA1なのである。そしてA1の、入手前の不安と入手後の現実のギャップは次のような感じ。

コンパクトネス
不安 Web上には色々な人がこのカメラを手にしている写真がある。ところが、なぜか持つ人によってスケール感が違うという印象を受けた。その落差も、現物を知らない私からすると半端じゃない。「豆カメラ?」と思えるもの(とくに、太った人が手にしているケース)から「フィルム一眼と同じじゃんか」と思えるもの(とくに、モデルのようなスマートな女性が手にしているケース)まで…。メーカーサイトなどで、例えば世界中に普及しているフロッピーディスク(CDケースでもいいが)といっしょに撮影したイメージカットがあれば嬉しいな、と思ってしまった。
 これに関しては、コニカミノルタ(当時はミノルタ)のMSの担当もされておられた田中博さんのサイトが大いに役立った。知り合ったのは偶然ながら(私もMS会員なのだが…汗)、A1が発表される前からメールで、 写真の楽しさに関して語り合う仲に。その過程で、A1に関する質問にも答えていただいたりした。田中さん、本当にありがとうございました。それで田中さんは現在、オリンパスに移籍、活躍されている。MS担当者と会員という間柄ではなく、「写真の楽しさ」が出発点だったこともあり、いまだにお付き合いさせていただいている。
現実
 カタログデータから想像した通りの大きさだった。
 コンパクトネスを強調しようとする意図ならデブちゃんがカメラを手にしているのもいいが、暑苦しくなると逆効果。かわいこチャンなら好感度は上がるが大きく見える。とするとこれからは、「巨大なかわいこちゃん」というモデルのジャンルが確立するんじゃないかな、モデル事務所の皆さん(笑)。例えば私は、ニコンのCoolpix3100を、実物よりもふた回り以上も大きい程度で想像していた。最近になってサンパウロで実物を見て、あまりのコンパクトネスにたまげた。

EVF
不安 果たしてEVFは使い物になるのか? Webで検索しようにも許容度は人それぞれ。購入して手元に届くまで分かるわけがない。
現実 私は…「慣れたい」とは思わないが、「慣れるしかない」というところか。とりわけミノルタが心血を注いだファイダーを搭載したα-9に慣れた目からすると、細密感は圧倒的に足りない。細部が見にくいため、通常のファインダー以上に四隅に神経を使わないと、余計なものが写り込んでいることが多い。さらに、かなり大まかなピントしか分からない。「手にして愕然とした」という感じである。じゃあダメか?というと、けっこう普通に使っていたりするんだな、これが。ただし、撮影後の画像確認をEVFでする気にはならない(最低限、背面液晶で行う)。

レンズ
不安 F2.8-3.5って暗いかも。その分「手ぶれ補正がある」というわけか? それにネット上では、歪曲がひどいという意見もあった。
現実 銀塩ではF1.4-2ぐらいの単焦点を使うことが多いので、実際に使用すると違和感は否めない。C-2000ZですらF2.0-2.8だったことから、DiMAGE A1のレンズは使い始めるとあまりにも暗くて、やはり愕然とした。ただし、これもEVF同様すぐに慣れた。私自身はかなりの唐変木なわけだが、このカメラに対する私の適応能力には、われながら驚いてしまう。恐らく、操作性の良さにカバーされているところが大きいのだろう。
 歪曲に関しては、色々とアップされているA1の画像を見て「気になる人は止めとけば?」といっておこう。私の場合は撮影力という観点からA1を選んだ。つまり、歪曲が少ないにはこしたことがないが、この程度は許せる。映像として手元に残すことができるなら天国、残せないならオマンマの食い上げ。美しい映像を残したいというのもひとつの考えだが、私は、自分だけが撮影できたという部分に価値のある映像を残したいと思う。そんな写真なら、「歪曲があるからダメ!」などという人はいないはずだ。

MF(マニュアルフォーカス)
不安 どの程度、実用的なのか?
現実 銀塩一眼レフになれた人に対しては、「できない」と言っておいたほうが良いかも知れない。ちょっと予想を裏切られた。E-20よりひどい(それはあたりまえ、という意見もあるが)。ただし、静止した被写体や、もたついても怒らない被写体、スナップ目的のフォーカス固定といった用途であれば、できないことはない。通常の撮影では、AF+FFPで問題なしだから、あえてMFを選択する必要もないことが多いけれど。

AF(オートフォーカス)
不安 コントラスト方式の撮像AFなんて使い物になるの? C-2000zは、スピードと精度でダメダメだったのに。
現実 実際に銀塩AF一眼と比較すると、暗い場所では特に遅い(所有するカメラでは303siあたりの感覚か)。それでも薄暗い室内程度(EV3=F2.8の時に1秒のシャッターが切れる明るさ)では、充分な能力を発揮する。良い意味で、予想を裏切られた。今のところ、MFに切り替えざるを得ない状況は、暗い室内、逆光、小さな被写体といった、背景にピンが抜けそうな状況ぐらい。

印刷原稿としての画質(あるいはノイズは大丈夫?)
不安 印刷物の原稿としてのポテンシャルはどのくらい? ノイズっぽいと言われるが。
現実 私の場合、写真はどちらかというと文章のおまけとして扱われるので(それは写真が下手だから、というのは言われなくてもわかっとるぞな)、200万画素機の画像でも過不足なく(?)原稿として使われてきた。というか、日本に送る時は相手の環境がわからないことが多いので、この画像を縮小すらしていた。それでも、半ページほどの扱いになったりするのでビックリしたものだ。そこで500万画素のA1は、どの程度までの大きさの印刷原稿として使えるのか、印刷原稿としての素性を知りたいという思いはあった。が、そう思って探すと、A1の画像を大きく伸ばした印刷物は意外とないんだな、これが。私の場合、入手直後の一発目の仕事が印刷物(ポスター、と言っても複数の写真と文章を組み合わせたもの)だったが、その印刷物の現物は見ていないし、その印刷状況も不明なので良く分からない。でも、大丈夫なんじゃないの? もちろん、手にしたその日から仕事に使えてしまうというのは、操作性の良さを反映しているわけだが。

早朝。明るめに撮影、マイナスにレタッチした
この方法はノイズが出にくく諧調も豊か

 

第一印象 まずはデザインから

 EVFの外装がプラスチックだろうというのは予想していたが、左側版や内蔵フラッシュのカバーがプラスチックなのには、いささかガッカリした。メディアスロットの蓋の部分にはゴムのダンパーがあり、閉じる時の感触に配慮していることがわかる。しかし個人的には、内蔵フラッシュにこそこの配慮が欲しかった気もする。内蔵フラッシュはメーカーを問わず、ほとんどがパクッと開いてパカッと閉じる。この衝撃で断線したり、発光管が割れたりしないかと本気で心配してしまう。それは私が心配性なだけだろうか? たぶん、世界中の内蔵ストロボファンは同じ思いじゃなかろうか。ならば、コニカミノルタが先鞭をつけても良いと思う。

 上に90度曲がるEVFも、背面液晶が可動式になったのだから固定した方が良い気がする。「屋外で…」などと言われるのを懸念したのかも知れないが、別途に背面液晶用フードを用意して一本化する方がスマートだし、フレキシブル基盤という不安要素を1ヵ所でも減らすことができるのではなかろうか。あと、このボディーは左側から見ると、レンズを抱えてお座りするカエルを連想させる。皆さんはどうかな。

 ってことで、愛称は「かえるちゃん」?

 

Webでは分からなかったことなどを…

露出インジケーターがない
 ミノルタのフィルム一眼の素晴らしい機能のひとつ。ヒストグラム表示があるのだから、これはなくてあたりまえといえばあたりまえ。でも、マニュアル露出でフラッシュ撮影という時、このインジケーターがあると定常光とフラッシュ光のミックス具合が想像できるわけで、非常に便利だった。
 A1に関しては、フラッシュをOFFにすることで定常光のヒストグラムが表示され、EVFはその露出値における露出の状態を表示する。フラッシュをOFFにしなくてもヒストグラムだけ、この定常光を反映させたような形に変更するような状態をファンクションで固定できれば便利だが(あるいは同時に色違いで重ねて表示するとか)。

フラッシュのプリ発光は禁止できない
 これも、購入後判明。フラッシュ撮影すると、内蔵だろうが外付けだろうが必ず2回発光する。ADI調光だけかと思いきや、P-TTLでも発光する(機能を考えればあたりまえだが)。「それぐらいのタイムラグはいいじゃん」と、思う人もいるだろう。購入前は私もそう思った。しかし、外付けフラッシュを装着すると、このタイムラグは俄然、大きくなるのだ。内蔵ならパパッという感じだった発光間隔が、パッパッと表現できるぐらいに間延びする。これは日本の皆さん?も店頭で実機だけを触ったのでは分からない点だ。
「それでも、何でそんな小さなことにこだわるの? いちいち、Webで書くほどのこと? これのおかげでフラッシュの露出が安定するんだぜ」
 きっと、コニカミノルタの技術者もそう思っているに違いない。
 しかし、次に挙げるシーンを想像して欲しい。
シーン1 人物撮影。最初の発光で撮影が終わったと勘違いする人は結構いる。そして本撮影では表情が崩れている。人類がはぐくんできた写真文化はまだ、プリ発光に順応できていないのだ(オーバーな表現だけどさ)。
シーン2 宴会スナップ的な撮影。別のところを向いていた人が、目をしばたかせてこちらを見ている写真になる。どうしても、「声かけ写真」的になってしまう。私の使い方に限れば、膝にカメラを置いたままインタビューを続け、盛り上がったところでノーファインダーでそのままシャッターを切るということが多い。この場合も、視線はカメラに来てしまう。
シーン3 わが家の親ばか写真。最初の発光で赤ん坊は、必ずといっていいほど目をつぶる。本撮影では、目を閉じた写真しか撮影できない。これは、「赤ん坊にはフラッシュを使うな」というのとは別次元の問題だし、親ばか写真のためにカメラの購入を考えている人は注意すべき点だろう。
 ただし、解決策がないわけではない。フラッシュの発光モードをM(マニュアル)にするか純正以外のフラッシュを利用すれば良い。私は、ミノルタ製の旧型フラッシュ(5400xiで、これはプリ発光しない)を使うことで解決している。旧型フラッシュは、常にフル発光してしまうから、発光量を調節できるモデルを使おう。この点、5400xiはフラッシュのマニュアル発光量の調節が現行品の5600HSDよりも格段にやりやすい。汎用品なら、外光オートのできる機種。私の場合はマニュアル発光で光量を抑え、さらにバウンスを加えて光をやわらかくさせている(というか、バウンスさせるために外付けフラッシュを使うのだが)。
 テスト撮影した結果から絞りで微調整する(別にフォトメーターを利用しても良い)。バウンスは相対的に発光部と被写体の距離が離れるので、少しぐらい被写体までの距離が移動したところで露出は変わらない。RAWで撮影すればなお良し、である。この程度の運用が難しいという人はどんどん内蔵ストロボを使ってくれ、そう書きたくなるぐらいの簡単操作。実際にやってみると拍子抜けするはずだ。それぐらい、A1と5400xiの組み合わせは私のお気に入り。

バウンスでこんな自然なフラッシュ撮影も可能。
縮小以外、補正・レタッチは一切なし

旧型フラッシュでのワイヤレス発光はできない
 調光不可ながらも発光だけは可能とばかり思っていた。実際は発光しない。これはちょっとガッカリ。あと、対応型のフラッシュであっても、光量比制御(フラッシュとカメラを2:1)もできると嬉しい(もしかすると私が設定を見落としているだけか?)。もちろん対応フラッシュ2台なら、光量比制御は可能(なのだけど私は1台しか所有していないんだわ。追加購入の予定もなし。何しろ、旧型のフラッシュは大小合わせて4台所有している)。

RPモードがない
 RPモードって何だ?という読者のために書いておくと、レリーズ・プライオリティー(レリーズ優先)の意味。AF撮影時、ピントがあっているかどうかに係わらず、シャッターボタンを押したらシャッターが切れるモードのことだ。ミノルタのフィルム一眼では、中級機以上で当然の機能だったはずだが…。将来的に、A1は入門機という位置付けになるのかもしれない。「おいおい、型番が1だぜ!」という人もいるだろうが、ミノルタは上級機からの並びとして、基本的に奇数で9、7、5、3、1というナンバー付けを伝統的に採用してきた。これはM型ライカの型番(上級機が3、普及機が2、ファインダーなし廉価機が1)を真似たものといわれている。これが事実だとすると、A1は入門機、A7が本命、A9がプロフェッショナルモデルということになり、かなりワクワクするのだが…。

ストラップは専用のものしか使えない(のだけれど工夫次第)
 取付金具が小さく、汎用のストラップが金具に通らない。そこで大型の金具(というか通常の金具)に交換したところ、ボディー左側はダイヤルに接触して調子が悪い。右側も通信端子の邪魔になる。つまり、金具は付属のものが限界。そこでガス台で汎用ストラップの先紐をやわらかくして強引に装着した。幅広のストラップは、ボディーに巻きつけて収納することで擦り傷を減らすことができる。ちょっとした工夫でさらに使い勝手が向上する。

上部液晶ディスプレイの照明
 シャッターボタンを半押しにすると、常に点灯する。できれば、前ダイアル脇などに別途、ボタンを設けて欲しかった。電源を長持ちさせる意味もあるが、夜間撮影で強盗の標的にならぬよう、目立たず撮影したい時は多い。

自動オフからの復帰は2クッション
 これは、実際に使ってから初めて分かった。電源を入れたままカメラをカバンに放り込み、「おっ!」っと思った瞬間にカメラを取り出してノーファインダーでパチリ、のはずが撮影されていない。これは、最初の操作で電源ON、もう一度押してシャッターというロジックのためである。電源が自動的にシャットダウンされていても、上面パネルは表示されており、ちょっと戸惑う。もっとも、そんな戸惑いも最初の1回目だけ。事実上は問題なし。ただ、「グリップを握れば電源復帰」という感じでも良かったと思うが。

フォーカスホールドボタンがない
 意外以外のなんでもないのだが(と、一発変換させてみました>IME2000)、本当に存在しない。AF優先思想のカメラ、ということだろう。

USB接続は意外と速い
 これは何というか、私の特別な環境によるものなのだが。C-2000zでは、フラッシュパスを使ってパソコンに画像を取り込んでいた。まとまった取材なら、「永遠とも思える時間がかかる」という表現がピッタリなほど。「じゃ、転送中にシャワーでも浴びるか(わが家には風呂がない)」なんて席をはずして戻ってきたところ…、「転送が終わってないじゃん」ということもあった。それと比較すれば(比較するのが間違い?)、天国と地獄だ。いやはや、フラッシュパス並みの転送速度(絶対的な、という意味ではなくて、ファイルサイズが大きいので、同じ枚数で同程度の転送時間がかかるという意味)を想像していたんだな、私は。

CFをストレス無く取り出せる人はいるのか?
 CF(コンパクトフラッシュ)を取り出そうとボタンを押すと…その押し込んでいる指に出てきたCFが当たる。押し込もうとする動作に応じて出てくるCF。まるでひとり相撲。私の指が太いだけか? 何かこう、ボタンじゃなくてレバーにすれば解決しそうだが…。部品の性質からして、これはA1だけの問題じゃないはずだ。

つづく

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