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出でよ! 新種どんぶり |
2003年7月22日 |
サンパウロ在住 美代賢志 |
先日も天津丼を食べたのであるが、昨日は竜田揚げ丼を食べた。自分で作りながらも、この奇妙な食べ物をそんな名前で呼んでよいのか? という気分が去来した。このみょうちくりんな食べ物と出会ったのは、大学時代までさかのぼる。
「どんぶりとは、フタして蒸らしてから食べるもんだ」
幼い頃、すぐにフタをとって食べようとしたら、そう父親に教えられた。私がフタ無しのどんぶりを初めて食べたのは、その父に連れられて行った吉野家の牛丼(倒産前の方)であったと思うが、あれはまぁ、別格という気がする。で、フタなしというのに意識的に驚いたのは、天丼のチェーン店(名前を忘れた)だったのではなかろうか。もともと、天丼やカツ丼などというのは衣がフニャフニャになって私はもう、見るのも嫌だった。が、この店の天丼はフタがない。それが結構いいもんだと感心した。チェーン店などというのはまぁ、給餌といって悪ければ掻っ込み食いをするところであろうから、がっつきながら早食いする。と、蒸らしてもいないわけで、その衣もまぁまぁ、ふやける前に食べ終えることができた。
で、大学時代。
学生食堂で、「竜田揚げ丼」なる珍妙な食べ物を発見した。初めて目撃した時は、ご飯に鶏カラが載っているだけ、という感じ。ま、食堂のおばちゃんのエクスキューズを代弁すれば、一応、たれがかかっていて、きざみ海苔も載っている。しかしその姿に、フタなし系どんぶりの究極の姿ではないか? などと感動したものである。何ゆえ感動したかは全く覚えていないが、妙に気に入ってよく食べた。
ひるがえって現在のわが家である。
天津丼は、二つを一度に食べたい、という要望によって誕生したという。サンドイッチの出自に似ている。そしてどちらも、二つの食べ物が融合することで、味も昇華させている。すばらしい。で、わが家のどんぶりはそんな高尚なものではなく、「なるべく皿を洗いたくない」という要求によって誕生した。なぜなら、「アンタが料理をすると、味はともかくも何でそこまで皿を汚すわけ?」とブラ妻が不思議がるほど、汚しまくり。私自身もよく分からないほど、確かにお皿などを使いまくっている。そして製作段階で疲労困憊。完成した頃には、片付けなんてやってらんねぇや、という気分。いよいよ盛り付け段階になって、「めんどくせぇ、どんぶりでいいや」と、神の啓示のように妥協の台詞が頭の中をグルグルまわるのである。
そのうち、焼肉丼やら餃子丼、焼き魚丼、ありとあらゆるどんぶりが誕生しそうな気配なのであった。そういえば、ご飯にマヨネーズをかけて「マヨネーズ丼などと称している人がいる」というのは本当かな。とりあえず、人間としての一線をこれ以上は落っこちたくはないと踏ん張り中だ。
ま、それほど面倒くさがりの私とはいえ、友人には一歩譲ると言っておこう。愛知県在住の通称ジョニー君は大学生時代、皿洗いどころか鍋や薬缶、箸をも洗うのが嫌で、インスタントラーメンに粉末スープをふりかけ、パリポリと食べていた。なぜそれがばれたかって? ある時私が、戴きものの液体スープのインスタント焼きそばを彼にプレゼントしようとしたところ、
「あ、液体スープはあかんねん。俺、そこまではでけへん。気色悪いやん」
「何が?」
「あ、いや、俺、粉末スープしかあかんねん」
「でも、どうせやから持ってけよ。金のないときに食ったらええやん。俺は通いやし…」
「その、俺、粉末スープ振りかけて生で食べてんねん…」
と、ゲロした。マックユーザーでお洒落な男前のジョニー君は、実はそんな「面倒屋」なのだよ。って、読者はほとんどご存じないはずだけど。でもジョニー君のお友達&彼女! 彼のクールな身なりに騙されちゃいかんのだ! 私も人のことを言えた義理じゃないけどもね。
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