Home l 談語フォーラム l リンク l カタカナ表記について l サイトについて l ご意見

貴卑コラム l 作ってみようブラジルの味 l 迷訳辞典 l ブラキチさん いらっしゃい! l 何でもブラジルデータ

求む 大阪イノベーション

2003年6月12日

サンパウロ在住 美代賢志

 今年は阪神がすごいらしい。そんな話が、ブラジルにまで伝わっている。

 もちろん阪神電鉄、じゃなくて阪神百貨店。でもなく阪神タイガースである。よもや知らない人はいないと思うが、野球のチームである。もちろん、セリーグのプロ球団。ただし、甲子園の優勝校と試合をすれば負けてしまうとまで言われている。

 ちなみに私は、阪神タイガースのプチファンである。プチな理由は、野球のチームの中では阪神が好きだが、そもそも野球というスポーツが嫌いだからにほかならない。

 あなた、野球が好きですか?(ここんとこ、吉永小百合さん風に)

 もうひとつ、阪神タイガースは好きなのだが、阪神タイガースのファンは嫌いだ。なぜって、なんだかイモっぽい(死語?)でしょ。「都会モノが田舎モノのフリをしている」というフリをしている田舎モノの感じ。田舎モンが田舎モンとして振舞うのは、演出とは言わないだろ? ま、道頓堀に飛び込むような奴らはみんな、東京辺りで日ごろ屈折した心境で阪神を応援している奴らだろうよ。まさか読者で大阪人の諸君らは、そんな東京人のまねごとなぞしていないだろうな?

 それにしても大阪って、何でこんなにもセンスがミソクソなのであろうか? 同じ大阪が世界に誇る(個人的願望、入ってます)カメラメーカーのミノルタにも、同じイメージがついてまわる。私が最も愛するカメラメーカーであるミノルタは、その商品企画の詰めの甘さやデザインの悪さで、「終戦直後の町工場的カメラメーカー」という形容詞がピッタリなのである(そんな頃はまだ生まれていなかったが)。モデルに声をかけた瞬間に、「やだぁー、そんなカメラ!」などと言われそうなデザイン。モデルはお金で解決できるが、これが恋人なら、「アタシ、あなたのセンスについていけない!」などといわれそうだ。写真が撮れないだけならまだしも、破局になったらどうしてくれる?

「とりあえず、作ってみましてん。見てくれは悪いけど、中身はまずまず。男は中身で勝負でんがな。多少問題があっても、すぐに慣れますさかいな!」

 商品の良し悪しはユーザーが決めるんじゃ、ワレ! などとツッコミのひとつも入れたくなるような商品企画で、親近感溢れる企業である。そのミノルタがα-7000というAF(オートフォーカス)一眼レフを世に送り出したのが1985年だった。カメラ業界に旋風を巻き起こしただけでなく、その革新的な発想と決断は、経済界に広く影響を与えた。その年は、まさに阪神タイガースが最後に優勝した年。だっけ?

 あの当時、私はミノルタという企業が存在することすら知らなかった。いや、知っていたかもしれないが、少なくとも意識の上に上がってきたことはない。だいたい、カメラに興味はあったが、天文学的に高価なものだと思い込んでいた。あの頃の私は、父親の持っていたペンタックスのレンズにうっかり指紋をつけてしまい、アタフタするようなガキであった。汚れを取ろうと指の腹でそぉーっと拭いて、レンズを余計に汚したもの。最後はレンズをぺロっと舐めて、唾液をレンズ全体に薄く引き延ばした。これだと、相対的にどこが汚れているか分からない。後日、自分でカメラを趣味にするようになってから、これをコーティングと呼ぶのだと知った。さすが、天分とは学ばずして身についた才能のことを言うのだな。

 ちなみに、「横走り布幕フォーカルプレーンシャッター」の動きが面白くて、低速シャッターにして指を間に入れるギロチン遊びをしたりもした。先幕と後幕の間にできるわずかな瞬間にタイミングよく指を出し入れしないと、シャッター幕がギロチンのように指をちょん切る。いや、指は切れはしないが、シャッター幕に指が挟まってしまう。この遊びでは3回目に、シャッターが壊れた。これは今もって、私の秘事である。おとーさん、こんなHPなんて読んでないと思うけど、ごめんなさい。

 はて。ぐだぐだ書いて何が言いたかったのであろうか?

 おう、つまりは今年は、ミノルタを初めとする関西系企業が低迷する日本の経済界にイノベーションを巻き起こさねばならない年なのだ、ということである。前回のように。

 日本が世界に誇るドクター中松氏(これは本当)によれば、氏はひらめきを得るためにプールに潜り、擬似酸欠による仮死状態を体感するようにしているという。そうなのだ。阪神が今年、何かの拍子に優勝した際は、道頓堀に飛び込むだけでは駄目なのだ。飛び込み、そして潜水。仮死状態にまでいってこそ、歴史に残るアイデアが生まれるのである。ミノルタの技術者よ、前回のように私がビックラこくようなすばらしい商品を送り出してくれ。

 もっとも、「恐るべしタイガース・カメラ」なんてのは止してくれよ。トラ柄カメラ、確かに恐るべしのビックラこきまくりだがな。

 道頓堀に飛び込んだだけで喜んでるぐらいじゃ、まだまだイモ。そう肝に銘じて欲しいものよ。そうだろ? 諸君。

貴卑コラム目次 l ページトップ

当サイトに掲載の文章や写真、図版その他すべての著作権は、断りのない限り美代賢志個人に帰属します。

Copyright (C) 2002-2004 Kenji Miyo All right reserved.