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ブラジル流帝国主義

2003年2月21日

サンパウロ在住 美代賢志

 今週の「ベージャ誌」に、「帝国主義のブラジル」という記事があった。

 要約すれば、「多くのブラジル企業がラテン・アメリカ諸国の経済を支配していながら、相手先国とうまく調和している。この道が、米国とは異なるブラジルの帝国主義だ」というもの。記事中、ラテン・アメリカ諸国で業界上位に食い込んでいるブラジル企業は、少なくとも150社を超えるという。主な企業を列挙してみよう。

企業名 進出国 進出状況
Ambev
(飲料会社)
・アルゼンチン
・ウルグアイ
・ベネズエラ

・アルゼンチンのビール部門でシェア70%

・ウルグアイでは47%

・ベネズエラでは業界2位

ペトロブラス
(石油公社)
・ボリビア
・アルゼンチン

・ボリビアの天然ガス生産トップ企業で精製量の98%を占める

・アルゼンチンでは精製とガス配給でトップ企業

Alpagatas
(サンダル等)
・コロンビア
・ベネズエラ
・ドミニカ共和国
・プエルトリコ

・「Havaianas」の商標で、コロンビアとベネズエラでシェア60%

・トラック用帆布シートで、ドミニカとプエルトリコでシェア95%

Hering
(鰯の缶詰)
・アルゼンチン
・チリ
・ウルグアイ

・年間7万個を輸出。うち51%がアルゼンチン、18%がチリへ

・ウルグアイでシェア1位

Tigre
(PVCパイプ)
・ボリビア
・パラグアイ
・アルゼンチン

・ボリビアでシェア70%

・パラグアイでシェア80%

・アルゼンチンでシェア2位

Marcopolo
(トラック・バス)
・メキシコ
・アルゼンチン
・ベネズエラ
・コロンビア

・シェア30%でメキシコ第2位のメーカー

・その他の国を併せてラテン・アメリカ市場でトップに

Gerdau
(製鉄)
・ウルグアイ
・アルゼンチン
・チリ

・ウルグアイ最大の製鉄会社

・アルゼンチンとチリで第2位

Volkswagen do Brasil ・メキシコ
・エクアドル
・ウルグアイ
・アルゼンチン

・ブラジル開発のGolがメキシコ輸入車のトップになったほか、同国での車種別売り上げで第3位に

・エクアドル、ウルグアイ、アルゼンチンにおけるトップメーカー

・ちなみにGolは中国へも部品を輸出(中国で組み立て)している。

 

 この数字を見ると、まさにタイトルどおりの「帝国主義」というか、独占企業のやりたい放題という感じなのだが、地元の反発はないという。その理由として、「進出先に同業種がない、またはほとんど競合する状況が存在しない」こと、「進出先では、管理職も含めて極力ブラジルからの派遣を減らす」ことだとベージャ誌は分析している。進出先の競合という点では、自社の特長を客観的に分析することが必要だろうし、派遣社員を減らすことは地元社員との信頼感が大切になる。Tigre社などは、管理職でもブラジル人の比率は10%以下だそうだ。

 相手先国の経済規模が小さいというのもあるだろうが、こうした「和を持って進出する」というブラジル企業の社風は、ブラジルの国民性にもその理由があるように思う。そしてこうした進出をバネにして、アメリカ自由貿易圏(FTAA)などを視野に入れはじめている。

 もうひとつ、21日のインターネット版フォーリャ紙で知ったのだが、「デジタルテレビ放送規格」でブラジルは、独自開発する道を選ぶという。この規格はこれまで、日本と米国、ヨーロッパの方式から選択するとされていた。ところが2月20日、アルゼンチンのEduardo Duhalde大統領公式訪問にあわせてブラジルとアルゼンチン、中国の3国で独自規格を策定しようとブラジルが呼びかけたそうだ。

 確かに、これまでは日米欧のどれかの規格を採用することで、製造コストを下げるとしていた。ところが、そもそも中国との共通規格を制定し、機械は中国がバンバン製造してくれればそれで良いということになったのだろう。 アルゼンチンとブラジルの2カ国が南米をまとめ、中国がアジアをまとめれば、さながら「途上国規格」という日米欧のユーザーを上回る多数派規格が出来上がる。

 途上国で必要とされる要件、それは途上国自身がよく知っている。これは、ブラジル流帝国主義とも相通じる「和の思想」か。

 日本からの進出企業には、ちょっとできない芸当ではなかろうか、と思う。まぁ、そんな財界よりもひどいのは政界で、小泉首相もいい加減、米国のお先棒を担ぐのは止せばどうかと思う。それとも何か、和の思想でもって日本国内の「友好的イラン人の声」でも吸い上げたのか? その前にブラジルのように、周辺国の盟主であってほしい。日本人がウカウカしている間に、中国がアジアの盟主として復活する日も遠くないぞ。

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