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パソコンは若者の専売か? |
2002年11月29日 |
サンパウロ在住 美代賢志 |
ブラジル在住の日本人、それも移民1世でパソコンを使っている人の平均年齢を算出すると、いったい何歳になるのだろうか?
来年は(一応)、戦後移民開始50周年だという。一応、というのは非公式な(国家事業ではないという意味の)移住は、これ以前から行われていたからである。さて、このようなことからも、ブラジルの日本人パソコンユーザーの平均年齢は、日本のそれと比べると非常に高齢であるというのが分かってもらえるだろう。
教える方も大変らしい。いや、私の場合も大変だった。それまで手書きでやっていた原稿書きや、切り貼りだった新聞編集作業を、モニター上でやるのだ。長い間、書体や行間、文字間などを検討し、いよいよ導入! ということで制作部のおじさんたちに教えることになった。
「ほう、すごいねぇ。で、それを美代君はできるわけだ。じゃあ、ちょっと続けてやってよ」
覚える気は無いのか?? おいおい。そういう訳で、制作部に転属させられたりした。そして…、当たり前だが、制作上の問題は倍増してしまったのである。電子化された部分とされていないものを中途半端に混在させると、それ自体が問題となるのだ。
コーヒーの師匠「TKYM」さんが関係しておられるパソコン教室のHPの教室風景に、「熟年クラス」なる分類があってふと、そのようなことを思い出した。
それにしても、パソコンの使い勝手を画期的に向上させたのがマウスなら、「パソコン三猿状態」の熟年世代に抵抗感を与えているのも、マウスじゃなかろうか。
上司だった某デスクは、マウスポインターが微妙に振動する現象に悩まされていた。
「リキんでいるんですかね。でもそれも慣れですョ、慣れ」
そう思って見ていると、実は違うのである。この方、締め切り終了後は必ずアルコールを必要とする。水の代わりにアルコールを飲んでいるような人だった。普通の人にとっては、ひとりで飲む酒は、よほどの楽しみ(銘柄やグラス、そのほか)が無ければ味気ないと思う。ところがこの上司は、「アルコールだったら日本酒でもピンガでも、ビールでも、何でもエエよ。銘柄なんかも関係ない」という感じで、入稿後、編集部備え付け(!)のお酒をひとりでガブガブ飲むような人だった。
つまり、アル中。
で、禁断状態で集中力の欠けた状態に震えるマウスポインターが加わり、ますますパソコンから離れていった。ま、そんな三猿は日本でも多いかもしれない。この場合はマウス以外のポインティング・デバイスでも同じことか。
さてさて、一方で自主的にパソコンを覚えようという人も多くて、ブラジルの場合はその総本山ともいえるのが日伯文化連盟のパソコン教室である。こちらの生徒さんは、上は90歳超まで、実に活き活きしている。生徒さんの平均年齢は、60代前半ぐらいか。日本語に飢えたブラジルの環境にあって、インターネットというのはまことに革新的な出来事だった。メンテナンス面でも、わざわざ日本から運んできても、壊れたら事実上ゴミ箱行きのワープロなんかも比べ物にならない。しかもここで学ぶ人たちは、現実としてそれを必要としているのだから、熱意があって当たり前か。
それでも最初の頃は、マウスにまつわるこんなエピソードもあったそうだ。
「では、画面のワープロというアイコンにマウス(カーソル)をあわせて、ダブルクリックしてみてください」
「先生、うまく行かないんですよ。ちょっと見てもらえますか?」
そのおじいさんは何と、マウス本体を直接、モニター画面の該当するアイコンの上に当ててダブルクリックをしていたそうな。そのような立体マウス、今ならどこかで商品化されているかも。
かようにマウスは、功罪、そして悲喜こもごものエピソードを提供してくれる。このエピソードを思い出す度に、日本の熟年世代もぜひ、がんばって欲しいと思うのだった。
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