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2002年6月1日 |
大分市舞鶴町1-2-17
セゾン舞鶴101号
高倉道男 事務所
海外日本人代表を国会に送る会
会長 高倉 道男
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外務省の公表した海外在住日本人の数は84万人だという。しかし、この数字は在外公館に在住届けを出した人の数字で未届けの数字を含めるとこの倍以上いるのではないかと思われる。実際、法務省が公表した海外での永住を目的とした海外渡航者の数は90年代初頭、年75000人だったが96年には10万人を突破、2000年は13万人とこの10年間で100万人を軽く突破している。
ブラジルへの日本人移住者数は、1908年の笠戸丸移民から第二次世界大戦前の41年までに約18万9000人。戦後、52年にブラジル移住が再開されてから90年までにブラジルに移住した人数は7万1000人。あの移民最盛期から80年間をかけてブラジルに26万人が移住したわけだが、この90年代からわずか10年余りで4倍もの日本人が海外へ脱出したことになる。
企業の海外移転から個人の日本脱出が続く日本は益々空洞化が進むだろうし、少子高齢社会になった日本はもはやかっての高度成長は夢物語となった。
空洞化の進む日本に反比例して増え続ける海外日系社会。この現実を無視出来ず、一昨年から在外選挙権が実現した。しかし、煩雑な登録手続き、魅力も興味も持てない比例代表選挙の投票権だけという半人前の在外選挙制度下、在外有権者の登録者数も伸びず、その投票率も低迷している。この現況をみて「在外投票権は不必要だ」という声が日本の政治家の一部にでているようだが、それは見当違いも甚だしい。ブラジルに代表される南米で1000キロを超える奥地から在外公館に出向いて登録手続きをするということは、北海道から東京に出て行くようなものである。このような人権無視の在外選挙制度は早急に改善すべきである。海外日系社会が切望している改善点は、「登録手続きの簡素化」「選挙区選挙の投票権」「海外選挙ブロック」の3点である。
日本はバブルが弾けて以降、政府も企業も国民もより内向きになったやに見受けられる。狭い島国、カゴの鳥列島の中で1億3000万人が金切り声を上げて生け贄を突っ突きあっている。グローバル化、国際化を錦の御旗にお経のように唱えているものこのような現実を海外から眺めると日本は江戸時代以降ずーっと鎖国状態のままではないかとさえ思われる。失礼ながら日本国内で純粋培養された政治家の皆さん、そして地元利益優先を余儀無くされる現行の選挙制度下では、日本の国益を真摯に考える外交も国際問題も票に結びつかないからどなたも真剣に取組もうとしない。このような風土の中で外務省が異質の鈴木宗男代議士に牛耳られるという醜態を生んだのも当然の帰結であろう。
「構造改革」は小泉総理の専売特許だが、前述したように根本的に日本の実体が変質している中でいくら構造改革をやろうとかってのような繁栄は取り戻せない。需要を喚起しようにももはや「ほしいものがない」モノ余り状態では、笛ふけど踊らず…であろう。ハンバーガー、コカ・コーラに代表されるアメリカン ライフ スタイルのアメリカンスタンダードを世界中が真似て追い求めていくと、確実に世界は破滅する。今こそアメリカンライフスタイルとは違うもうひとつの美しいライフスタイルを日本はモデルとして世界に提示しなければならない。それは「足るを知る」という古い日本の格言である。「シンプルライフ イズ ビューティフル」質実剛健の美しい日本精神を取り戻そう。
町工場のワンマン親父、シルバー世代、そして青年達よ、途上国に羽ばたけ! |
倒産、失業が増加する中、中高年の自殺が増えているようだ。成る程、自分の半径10キロメートル程度の世界で考えれば絶望感に襲われ自殺するしか他に道はないかも知れない。しかし、目を高く上げて世界を見渡してみよう。いきなり異国の外人社会に飛び込もうとしても言語、習慣、環境が違うからそれは無理だ。だが今や世界中に数百万人の日系社会がドーンと控えている。日本では小さい町工場に過ぎないかも知れないが、途上国に出れば一気に一流企業、大工場だ。例えば南米には百数十万人の日系人がいる。また、南米から日本に出稼ぎに来ている日系人は30万人もいる。彼等を中堅指導者として雇えば言葉にも技術移転にも何ら問題はない。毎日が日曜日で暇を持て余しているシルバー世代の人たちの高度な経験、技術を途上国の人たちに技術移転することは素晴らしい国際貢献になると同時に元気なシルバー世代の生き甲斐となるであろう。
生まれた時からモノに囲まれて育った今の青年たちにも何もない途上国でボランティア活動をしてもらおう。
徴兵制に代わる大学の1年間、義務としてボランティア活動をやるというのは如何だろうか。
日本の援助を受ける側の国に住む者の立場から見ると、日本のODAのやり方はまさに国民の税金をどぶに捨てるようなものだ。昨今JICAの援助のあり方も従来の「重厚長大型」から多少、現地の草の根型に方向転換してきたが、まだまだ改善しなければならない。また、いわゆるJICAの専門家派遣についても現地社会から見ると余りにも高待遇に過ぎる。高級マンションにゴルフ三昧で「彼等が日本に帰国した後、一体何が残ったの?」と現地の反感を買うのは当たり前だ。日本から高い金を払って言葉も満足に出来ない専門家を派遣するよりも現地にいる優秀な日系2世、3世を採用した方が遥かに実績も上がり、費用も安上がりになる。
莫大な金を拠出している国際銀行の「日本特別基金」の活用について |
日本は国際機関、国際銀行に莫大な資金を拠出している。しかし、その運用はそれぞれの機関の欧米の幹部に主体的に運用され日本人スタッフはその運用について意見を言おうものなら「日本は金さえ出してくれればいい」との暴言がまかり通っている。南米には百数十万人の日系人がいるので彼等が関わるプロジェクトにそれらの資金を活用させれば「日本の顔が見える援助」が可能となる。現に一部で日系人が関わったプロジェクトに米州開発銀行の日本特別基金が活用されている。
今や世界中に300万人を超える日系人が住んでいる。彼等は日本の貴重な財産である。しかしながら現況、この貴重な財産が活かされていない。出来得ればこの機会にユダヤネットワーク、華僑ネットワークに次ぐ日系ネットワークを結成し、母国日本と本当に血の通った交流を深めると共にいい意味での「外圧」パワーにしたいと考えている。
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