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書評 「アマゾンのほのん熱風録」 ― 堤剛太著
2002年7月5日
サンパウロ市在住 美代賢志

 「ブラジルと聞けば日本人は、アマゾンとカーニバルばかり連想する。ブラジルはもっと多彩で豊かなのに…」。そう嘆くブラジル人は多い。しかし本書を読めば、そう言うブラジル人もどれほどがアマゾンを知っているのか怪しくなるはず。

 本書の帯には、「なまあたたかな川風に吹かれて四半世紀――ワニもインディオもジャングルも登場しない日系人のアマゾン暮らしを軽妙に綴る」の言葉。戦後移民としてアマゾン川河口の街ベレンに住む堤剛太さんが、同地に暮らす日本人を活写する。その筆致は、アマゾン川から吹きよせる風のように温か。その観察眼は、熱帯の陽光のように鋭い。

 自らの体験談を中心に綴った本書には、確かに読者の想像するブラジルは登場しない。しかしそこで語られている「自分史」に織り込まれた生活、風俗、世相は、間違いなくブラジルそのもの。まるでベレンで生活しているかのような錯覚すら覚える。ブラジルで生活したことのある人なら、時には笑いながら、そして頷きながら読むこと必至である。そしてブラジルの大地をまだ踏まぬ人には、きっとブラジルのすばらしさが伝わるはずだ。

 ブラジル北部の赤道直下ともいえるこの街で、日本人として、そして時にはブラジル人として暮らす著者の生き様は、国際交流のあり方に一筋の光を投げかけている。1章「終のすみかはどこに」から、筆者の情熱が伝わる4章「先人移民の足跡を訪ねて」まで、開いたページから気軽に読み始めて欲しい。

 筆者の堤剛太さんは1974年、26歳でブラジルに移住。現在、汎アマゾニア日伯協会事務局長でブラジルで日刊(火曜から土曜)の日本語新聞を発行するサンパウロ新聞社のベレン支局長も務める。また2001年、「一人で来たブラジルだけど、今は五人。俺が我が家のルーツとはくすぐったくなるな」で福井県丸岡町の一筆啓上賞(最高賞)を受賞している。


アマゾンのほほん熱風録 ― 堤剛太著
 無明舎出版 電話=(018) 832-5680 / Fax=(018) 832-5137 インターネットでの注文も可
 定価1600円+税
   ブラジル(サンパウロ)での入手は高野書店、電話=(11) 3209-3313まで。

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