日本とブラジル、違うといえばずいぶん違う。
例えばブラジル。「シャワーじゃなくて風呂があればなぁ」なんてものではなくて、シャワー自体、電熱で暖める方式が主流。しかも安物は温度調節が2段階。つまり強と弱。そして微妙な温度調節は、水量で決める。熱量が一定だから、水量に応じて温度が決定される仕組みである。もちろん、Hotなシャワーが好みの管理人は当然ながら水量を減らすわけであるから、いきおい、ショボショボと滴り落ちるシャワーを浴びることになってしまう。その昔、パンタナールの安ホテルで、シャワーがお湯にならないことがあった。スイッチを切ってあるのだと思い、濡れた手でさわって感電したこともある。これは220Vだった。
日本での失敗、というか笑える話は、妻のほうが多い。何しろ日本語読解力ゼロ、会話もほとんどできない。さすがに英語読解力だけは平均的ブラジル人のレベル…つまりほとんどゼロ。加えて、サンパウロ奥地の田舎出身である。
結婚してすぐ、3ヶ月ほど日本に滞在したときのこと。外出中、トイレに行きたいという。ちょうど地元の駅舎がきれいに改装されていたので、そこへ連れて行った。一緒に入って説明するのは無理だが、まあ、わかるだろうと外で待っていると…。
突然、アラームが鳴りはじめたのである。
トイレからアラームゥゥ??
と思ったのもつかの間、女性の駅員の方が飛んできた。女性用トイレの前に立っていたというだけで変態青年(!)と勘違いされると困るので、急いで妻が原因かもしれないという旨の説明をした。すると、「じゃ、一緒に来てください」とのこと(結果的には、妻以外に利用者はいませんでした)。
そして入って一瞥、理由は即座に理解できた。
和式、洋式というトイレの形式ではなく、壁面に押しボタン(アラーム)あったのが原因である。ブラジルのトイレでは、水を流すのに壁面のボタンを押すのが一般的。続いて、タンクにつながった紐を引っ張るタイプ。もっとも、最近では日本の家庭同様のタンク直結のレバーも増えてきている。が、初対面の和式レバーというのは、理解不能だと思う。しかも壁面に押しボタンという状況なら、やはりポチッと押すのが心情か。
駅員の方の対応もよく、まったく騒ぎにならなかった。そして当事者である妻は、説明されるまで、水の流し方がわからなかった。が、何はともあれ、「”小”であったのがせめてもの救い」と、2人して笑いこけるのであった。夫婦して反省ゼロである。
後年、通訳として日本のとある工場で働いていた折、1人のブラジル人から携帯に電話が入った。
「今、長野県に住んでいます。そちらに仕事はありますか? 住宅は寮ですか? そのトイレは水洗ですか?」
実際の会話はポルトガル語である。しかもはじめて話す相手に、トートツにこんな質問を浴びせかけるのである。はて…。
「とにかく、この会社の汲み取り式便所に耐えられないんです。水洗便所の社宅に住めるなら、どんな仕事でも結構です」
と、その彼の話は続くのであった…。
このエピソードは、長野オリンピック後のことである。「ボットン便所が、そんなに嫌ですか?」と、つい日本の肩を持ちたくなる話であった。ま、私だって好きなわけじゃないですが。
|
こちらが、ブラジルで一般的なトイレのボタン
もっとも、このボタンを押しても当サイトは流れて行きません |
|