サンパウロ在住の駐妻エスラビさんがお召し上がりになり、掲示板に書き込んでいただいた「ピラルクー(Pirarucu)」は、南米のアマゾン地域に生息する古代魚です。具体的な水系としては、アマゾナス水系とトカンチンス水系、アラグアイア水系です。「世界最大の淡水魚」として、4mから5mに育つとその昔、私の読んだ図鑑にありました。実際はやや誇張されているようですが、それでも最大「級」といって間違いないようです。
図鑑によれば…というのは冗談で、当サイトで孫引きするぐらいなら皆様自身で調べてくださったほうがより詳しく、かつ知的好奇心を満足させていただけるはずです。
さて、ここからが当サイトならではのピラルクー・アナトミア!(って何?)
ピラルクーとは、ツピー語のpirá+urucúによる造語で、piráというのは魚、とくに「淡水魚」を意味します。「ピラーニャ(ピラニア)」のピラーで、このほかにも多くの魚や魚に関する言葉(例えば産卵期にアマゾン川の魚が集団で遡上するpiracemaなど)に使われています。一方のurucú(ウルクー)というのは、urucuzeiro(ウルクゼイロ)という木になる「木の実」を指します。インディオが顔や体に彩色する時の赤い染料となるほか、料理の食紅(と香辛料)として利用される木の実(種)です。原産はブラジルです。別名をウルクン、コロラウと言います。淡水魚の王にふさわしく、インディオの日常生活と密接に関わる木の実に由来する名前だといえるでしょう。と、書くと何だかロマンチックですが、実はこのウルクー、英名を「アナット」という食紅です。しかも現在では、より赤く改良された品種が東南アジアで大量に生産されて世界中に出回っているという、ごくありふれた植物です。
ピラルクーとは、「ウルクーの(ように赤い淡水の)魚」という意味です。「赤い魚の意味」と説明されている場合が多いですが、ツピー語のウルクーには「赤」という意味はありません。
ピラルクーは水系によって模様などに若干の違いがあるようですが、小さいときは緑色の金属光沢があり、成長するにつれてその名の通り鮮やかな赤い斑点や横縞が見られるようになります。その身は(数回食べただけの個人的な感想で言えば)タラのようで水っぽくてしまりのない大味で、美味しいとはいえない魚です。(それだけに個人的なローカルネタを書きますと、サンパウロ在住の養殖専門家K氏が育て、サンパウロの焼き鳥―だけではないですが―職人Wさんが調理したピラルクーに、管理人は興味津々であります)
ちなみにピラルクーの舌はグァラナの実を固めたPão
de Guaraná(精力剤)を挽くのに使われ、その鱗は女性の爪やすりとして利用されています。
2004.01.07 追記
先日、グローボ局のテレビ番組でIbama(ブラジル環境・再生資源研究所)の担当者がコメントしていたのだが、ブラジル国内最大の淡水魚はピラルクーではないという。ナマズの一種で、それを調査目的で釣り上げて紹介していた。その魚の名前は忘れてしまったが…。
(右) ピラルクー(60cm級)。赤斑が分かりますか?
(下) ウルクーの花と実
(右下) ウルクーの種子。これを粉にして利用します。
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まるで絨毯のようなピラルクーの干物 |
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